栄養関連情報

2018.12.07更新

患者さんの「食べる」を支援するために

医療法人社団福寿会 

https://www.fukujukaigr.or.jp/

 

在宅部 栄養課 

課長  中村育子先生

はじめに

私は、福岡クリニック在宅部栄養課に入職し、在宅患者の元に訪問する在宅訪問栄養食事指導を行うようになってから、20年以上が経過しました。ここ数年、在宅訪問栄養指導の件数は、全国的にも増加傾向にありますが、まだまだ管理栄養士が充実している状況ではなく、必要な患者さんへ栄養指導が行き届いていない状況です。

一方、「日本在宅栄養管理学会」の副理事長および東北関東甲信越ブロックのブロック長をしていることから、在宅訪問管理栄養士の育成や、多職種連携の円滑化へ向けた活動も行っています。同じ在宅患者の生活を支える者同士、多職種が互いの業務内容を知ることはとても重要です。在宅では、自分にない能力を相手に借りることで患者さんのQOL向上に繋げられることを実感しています。

http://www.houeiken.jp/

(日本在宅栄養管理学会 ホームページ )

 

多職種連携について

在宅訪問栄養指導は、制度上月2回が限度とされており、患者さんに会う機会は、決して多くありません。しかし、患者さんの状態は、日々少しずつ変化しています。この小さな変化を捉えることは、栄養指導において、とても重要です。

自分が訪問していない時間帯の変化を把握する為にも、他職種の力を借りることが必要です。

当時、食べたい思いを持ちながら、ほとんど食事を口から食べることができなかった患者さんに介入した時のお話をします。訪問歯科診療の歯科医師の先生に、患者さんの口腔内の治療経過や状況を細かく教えていただいたり、食事のポジショニングについて食べやすい角度を教えていただいたり、こちらが把握できない情報を提供いただけたことがとても助かりました。我々管理栄養士は、口腔内の治療の状態や見通しなどは、判断できませんし、少ない訪問と時間の中で、たくさんの情報を伝えなければいけないことも多いです。そんな状況の中、同じ目線で活動している先生との交流は、とても心強く感じました。これらの活動が実を結び、この患者さんは、食べたかったハンバーグを食べることができました。

 

また、多職種連携を円滑に行う為にも自らのスキルアップが欠かせません。

栄養の専門家である管理栄養士ですが、在宅訪問栄養指導を行うにあたり、まず、在宅に慣れる所からがスタートです。在宅は、家庭環境や生活リズムなどが一人一人違うので、まずは、患者さんのライフスタイルに合わせた提案ができるようイメージを膨らませます。ここが病院と在宅で最初に異なるポイントです。さらに、患者さんから必要な情報を聞き出したり、栄養指導を行ったり、他職種との連携を取る為には、コミュニケーション能力も必要となります。

管理栄養士が在宅で行うことは、栄養スクリーニングで低栄養を見つけ出し、栄養アセスメントから問題点を抽出します。ここでは、食事内容の聞き取りから摂取栄養量を明確にすると共に、必要栄養量を算出します。そこから、不足している栄養素やその原因を探ります。さらに、栄養改善の目標を定め、目標を達成させるための栄養ケアを行います。栄養ケアの内容は、栄養教育・栄養相談・調理指導などがあります。栄養ケアやモニタリングは、定期的に行い、栄養改善してない場合は、問題点、目標、栄養ケアを見直します。これら一連の情報は主治医、歯科医師、ケアマネジャー等と共有します。情報をやり取りするツールとしては、情報提供書や報告書を用います。フォーマットは、基本的に統一されたものは存在せず、各々で作成されることが一般的です。

間違った解釈をしてしまうと、患者さんへも影響が出てしまいますので、患者さんの情報がうまく伝わるように気を付けます。

 

歯科医師から管理栄養士へ提供してほしい情報

同じ在宅でも、患者さんによって求められるオーダーは変わってきます。

例えば、この先、機能回復の見通しが立っている方と機能回復が見込めない、難病や終末期等「今」この瞬間にできることを考える必要がある方では、かなり違った対応となります。

 

機能回復が見込める場合は、ステップを踏みながら口腔機能の回復に向けた指導や栄養指導を行って、徐々に機能を向上させていきますが、終末期の患者さんの場合は、「どうやったら食べたい物が食べられるか」を第一に考えます。管理栄養士の立場としては、物性的に適している市販品の紹介や調理によって食べやすくなる方法をアドバイスすることがメインです。また、何故この量が必要なのか?何故この栄養素が必要なのか?患者さんや他の専門職を納得させることも管理栄養士の役割と考えています。

 

過去、このような患者さんに一緒に介入した歯科医師の先生は、適切な治療や状態を示すことだけでなく、患者さんや家族の不安が払拭できるように非常に丁寧な説明を行っていたのが印象的でした。患者さんや家族としても、「何故この治療をしているのか?」「今の痛みはいつまで続くのか?」「〇か月後には、噛めるようになる。」など今後の見通しを説明されれば同じ治療内容でも安心感が全く違います。内容は違えど相手を納得させることは、どの職種にも必要なことだと感じた瞬間でした。

 

患者さんの体重が減少傾向にある時、その原因として歯の治療が関係していることがあります。歯の治療は食欲低下や食べ物が食べにくいなど食事摂取量の低下に影響を及ぼすことが多いため、治療の見通しと共に、時期ごとの食形態の違いについての説明もあると、患者さんや家族のモチベーションを維持したまま治療を行えます。管理栄養士の立場から見ても、治療の見通しやゴール設定など、目指すべき所が明確であると、栄養指導の見通しが立つので、結果的に患者さんの歯科治療にも貢献できます。

これまでの経験から、歯科医師の先生には、図1のような情報を提供していただけると、栄養指導も行いやすいと感じました。(図1)

栄養指導の落とし穴と工夫

家庭環境が一切考慮されていない状態で食事の提案を受けている患者さんや家族も多くいます。例えば、ある患者さんの食形態レベルがミキサー食相当であることが望ましいケースのお話をします。当然、調理を行う際もミキサー状にする必要があるのですが、家庭にミキサーが無かったり、調理ができる家族が誰もいなかったり、ミキサー食の作り方が分からなかったりと様々な理由でミキサー食の提供が難しい状況も在宅では考えられます。

このような家庭にミキサー食の提案をしても、患者さんや家族は、どうしてよいかわからず、食べることができない状態が続き、低栄養などの状態悪化へ繋がります。まずは、何が問題かを明確にすべきです。さらに、ミキサー食のような調整が必要な食事を毎日提供することは、家族の調理負担も大きくなるので、ドラッグストアやコンビニなどで市販されているやわらか食やペースト状のおかずなど食べやすいお惣菜があることも一緒に提案すると家族も助かると思います。

今は、商品や形態の種類も増えてきているので、より患者さんの状態に合わせた選択も可能になってきています。食事だけで必要なカロリーや栄養素が取り切れない場合は、ドリンクタイプの栄養剤や高カロリー・高たんぱくのゼリー、おかずやおかゆに混ぜる粉末タイプの補助食など、ライフスタイルに合わせた方法で栄養を補いましょう。

どの程度の食事形態を準備したら良いかわからない時は、歯科医師の先生に相談するのも良いでしょう。

 

相談先を見つける

在宅では、訪問している専門職が全て揃っているとは限りません。場合によれば、歯科医師や管理栄養士が介入していないケースもあります。また、必要としていても、どこに相談すれば訪問してもらえるようになるのかわからないこともあるでしょう。地域の管理栄養士は、主に「診療所」「薬局」「居宅介護支援事業所」などに在籍(もしくは、契約)しています。まずは、ケアマネジャーさんに相談したり、下記のマップなどで栄養相談ができる場所を調べることができます。

https://www.dietitian.or.jp/about/concept/care/models/

(公益社団法人日本栄養士会 ホームページ )

 

さいごに

これまでにも、口から食べることが難しいと診断された患者さんはたくさんいました。一方で、適切な評価や訓練を受けることで再び食べることができるようになった患者さんもたくさんいました。在宅で過ごす患者さんの楽しみが「食べること」なのはよくあります。その思いを叶えるために、歯科医師の先生が後押ししていることもよくあることです。さらに、患者さんのQOL向上に貢献するためには、多職種それぞれの視点から患者さんの情報を別の職種へ積極的に発信することが不可欠だと考え、日々、意識しながら活動しています。

 

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一般の方が理解しやすいように配慮されたものでないことに十分ご留意ください。

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