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【施設訪問】 医療法人徳洲会 仙台徳洲会病院(宮城県)

チームで口腔ケア 〜ICUでのVAP予防の取り組み〜

◆ICU※1に口腔ケアを導入

医療法人徳洲会 仙台徳洲会病院では、VAP※2の予防だけでなく、少しでも早く患者さんに食事をしてもらいたいというNSTの思いから、積極的に口腔ケアに取り組んでいます。今回、NSTチェアマンの阿部忠義先生、歯科医師の小俣憲司先生、当時ICUの看護師をしていた横田潤子さん(現在は、仙台オープン病院に勤務)に口腔ケアの取り組みについてお話を伺いました。

医療法人徳洲会
仙台徳洲会病院
外科部長 NSTチェアマン
阿部 忠義先生

医療法人徳洲会
仙台徳洲会病院
歯科口腔外科
歯科医師 小俣 憲司先生

財団法人
仙台市医療センター
仙台オープン病院
看護師 横田 潤子さん

◆日々患者さんに接している看護師の提案で、口腔ケアを開始

仙台徳洲会病院では、2009年の春からICUでのVAP予防に口腔ケアを導入しています。VAPの原因は発生機序は明確になっておりませんが、誤嚥や吸入による細菌の侵入と考えられています。
当院は数年前に口腔ケアマニュアルを制作し、併設する介護老人保健施設や病棟の患者さんを対象にケアを実施してきましたが、ICU患者さん専用のケアは確立していませんでした。

そこでICUの看護師たちは、NSTカンファレンスの際に「気管挿管をしている患者さんを対象に、きちんとした口腔ケアを行いたい」という要望を出し、チームとして実施することになりました。
「患者さんの容態が良くなったら、食事を摂り栄養状態を改善してもらいたいというのが、NSTの願いです。そのとき、患者さんの口の中に潰瘍があったり、入れ歯が合わなくなっていたら困りますので『先のことを見越して』ケアを実施しようと思いました」(阿部先生)
「入院の前後を比較するだけでも、口腔内の環境は大きく変わります。ましてや意識がなく、バイトブロック※3で口を開けたままの状態では、口腔内は常に乾燥し、潰瘍を形成することもよくあります。」(小俣先生)

◆ケアシートの導入で、チーム全体の口腔ケアがレベルアップ

チームで口腔ケア

患者さんの口腔内の状況はひとり一人違います。また、口腔ケアを行う看護師の手技も微妙に異なります。そこで1日3回実施する口腔ケアのうち、1回は専門家に見守ってもらう方法をとりました。
「口腔内の観察の仕方や舌ブラシの使い方など、あいまいな部分があったので、わからないことは先生や歯科衛生士さんに聞いて、一つ一つクリアにしていきました。」(横田さん)
試行錯誤しながら始まったICUでの口腔ケアですが、そのレベルを向上させていったのはケアシートの存在です。ケアシートは、歯科医師や歯科衛生士と、看護師の間でのコミュニケーションシートとして大きな役割を果たしました。

使用した道具

「看護師さんと我々では、口腔内の観察の仕方などに関して当初は大きな相違があったのですが、ケアシートでのやりとりを繰り返していくうちに、お互いの見方が同じになっていくのがわかりました。同じような視点で口腔内を観察できるようになると、看護師さんたちのケアレベルも上達していきました。」(小俣先生) 「例えば、口腔内の歯肉の状況や乾燥の程度などについて、ケアシートを眺めると、私たちと先生たちの観察の仕方が違うのです。そこで、『どうしてだろう』という探求心が出てきて、もっと勉強したいというモチベーションへと変わっていきました。」(横田さん) ICUでは看護師が3交代制で入れ替わります。容態管理の申し送りは当たり前ですが、口腔が気がかりな患者さんに関しても、メモ書きや付箋を残しています。

◆成功のコツは、無理しないこと。スタンダードなケアを設定すること

口腔ケア症例
上:介入前
下:介入後

口腔ケアチームを成功に導いた最も大きな要因は、NST発足当時から歯科医師が参加していたことにあります。
「食べるのは口。だから口腔の専門家に加わってもらうのがいいだろうと、NSTチームに引き入れました。また取り組みを続けていくためには、無理せず楽しくやれる状況をつくることが大切です。」(阿部先生)
「気軽に継続的なケアを行うため、当院ではまずスタンダードなケアを決めました。それは、最低限のこととして『汚れや乾燥のない口腔』を目指すこと。それを基準に、全員が難なくこなせるようになったら『次は何をしようか』とケアのレベルを上げていけばいいと思います。」(小俣先生)
また、当地域では口腔ケアのクリティカルパスを用いて様々な施設が連携し、患者さんの口腔ケアを実施しています。連携することで、患者さんの口腔履歴がわかり、治療計画を立てる際の参考になっているようです。また研究会や勉強会は、施設の担当者たちが直接顔を合わすことができる、大変貴重な機会です。お互いの意気込みを感じとることができ、モチベーションアップにも繋がっています。
  • ※1:Intensive Care Unit. 集中治療室、集中監視施設のこと。
  • ※2:Ventilator Associated Pneumonia. 気管挿管による人工呼吸管理開始後48〜72時間以降に発症する肺炎。
  • ※3:気管内チューブを咬まないよう、開口を確保するブロック。チューブと一体化して絆創膏で頬に固定する。
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